ロボットの起源と歴史 ~過去を知ることで見えるロボットの今と未来~

ロボットという言葉ができる前の機械

ロボットの起源

ロボットの起源は紀元前にまで遡るとも言われます。
世界の神話や伝説には泥や石、金属で作られたゴーレムという人造人間が登場したり、ホメーロスによって作られた叙事詩「イーリアス」では、黄金製人間パンドラを作り出したという話があったりと、はるか昔から人型をした人間でない何かを作り出したという話は登場していました。

このようにロボットの起源は人型をした人間でない何かで、ここからロボットの歴史は始まりますが、このころはまだロボットという言葉はありませんでした。

時代が進み、19世紀になるとフランスのパリを中心にオートマタという機械で動く自動人形が作られました。

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引用-wikipedia

オートマタは楽器を奏でたり、文字や絵をかいたりと、人間と同じような動きをしたそうです。

日本のロボット からくり人形の歴史

日本のロボットにあたるからくり人形も、江戸時代19世紀ごろに盛んになりました。
このからくり人形も、日本のロボットの歴史における一つの起源だともいえます。
江戸時代のからくり人形の指南書には茶運び人形を始め、9種類の設計図と制作の手順が載っているそうです。

茶運び人形
引用-石川県金沢港大野からくり記念館

からくり人形が盛んになったのは江戸時代のイメージが強いのですが、からくり人形時代は平安時代末期の「今昔物語」にも記述を見ることができるとのことで、その歴史も古いものです。
また、日本には古くから傀儡師という操り人形師がおり、傀儡の技術に16世紀の西洋の時計技術から生まれた和時計の技術が組み込まれからくり人形として江戸時代に盛んになったとも考えられいます。
参考-大人の科学.net からくり人形とその歴史

このころになってもまだ、自動人形やからくり人形はロボットとは言われていませんでした。
では、いつどのようにしてロボットという言葉ができたのでしょうか。

ロボットという言葉の誕生と現代のロボットの定義

ロボットという言葉の誕生

ロボットという言葉は、チェコ語で強制労働を意味するロボタ【robota】から作られたといわれています。
1929年ごろの観劇の中に人間と見分けがつかない人造人間が登場し、それをロボットと呼んでいました。
無尽蔵な労力で動き続けるというイメージ強制労働とつながって、ロボットという言葉ができたとも言われています。
ロボットという言葉の歴史はこのころから始まりました。

そして同時期に作られるようになった乗り物や電気製品などの機械が、動き続けることができるということから強制労働にイメージが結びつき、ロボットという言葉は有名になったといわれています。
動き続ける電化製品=ロボットという定義で考えると、冷蔵庫などの家電製品もロボットになりますが、現在の認識ではロボットなどの家電製品がロボットだと思う人は少ないのではないでしょうか。
では、現在ロボットとはそもそも何定義しているのでしょうか。

現代のロボットの定義

ロボットという言葉の定義は専門家も含め人によってさまざまです。
ロボットの学術的な定義の一つとして、日本ロボット学会が編纂したロボット工学ハンドブックで紹介されているものは、「自動性、知能性、個体性、半機械半人間性、作業性、汎用性、情報性、柔軟性、有限性、移動性」を持つものだと提唱されています。

また、実用的な「産業用ロボット」については、日本工業規格(JIS)の「産業用マニピュレーティングロボット-用語」(JIS B 0134-1998)の用語の1100番に「自動制御によるマニピュレーション機能または移動機能をもち、各種の作業をプログラムによって実行できる、産業に使用される機械」と定義されているそうです。

つまりロボットという定義は、場所によって人によって状況によって、変わってくるものだといえます。

最近では、Pepperやロボホンのように、AI(人工知能)を搭載した人型の機械がロボットという言葉の代表的な姿を現しているのかもしれません。

参考-ロボット白書2014

ロボットと人間が仲良くするためのルール「ロボット三原則」

ロボットって昔から人気者なのだろうか?

現在、ロボットとして思い浮かべることが多いと思われるソフトバンクのPepperはどこに行っても人気者です。
子供たちに囲まれ、大人も興味津々で人工知能を搭載したロボットにくぎ付けになっています。

しかし、ロボットの歴史をさかのぼると神話や伝説の時代では、ロボット(人造人間)は人間の敵というイメージが強くありました。

1927年にSF映画「メトロポリス」という映画が、ロボット=敵というイメージの転換点となったとも言われています。
そこに登場する「マリア」という名前の女性ロボットが、現代まで続くSF作品のロボットのもとになったという考えもあり、マリアは金属の体を持つ美しいロボットで、映画では少ししか登場しないのにもかかわらず人々に強い印象を与えました。
ちょうどこのころ現実の世界でも電話を使って離れた場所にあるスイッチを動かす遠隔制御装置などが作られました。
遠隔操作は今では当たり前の技術ですが、その時代の人はこのような遠隔操作で動かせる技術をロボットみたいだと思っていたようです。
その後SF映画では、ロボットは人間の敵であり、味方であり、ライバルであり、友でありと様々な形で登場し、感動や笑いややるせなさ等、様々な感情を私たちに与えてくれました。
ロボットが登場する映画は数多くありますが、人工知能を有したロボットがいる未来が描かれた、1999年公開のアンドリューや2001年公開のA.I.、2004年公開のアイロボット等は、もしかしたら進化するかもしれない人工知能と人間のかかわりも考えさせられる映画になっています。



そして現在、ロボットは映画等の空想の世界ではなく、現実世界で人工知能を有し、私たちの生活に様々な影響を与えるようになりました。

ロボット三原則

上記のように映画や小説の世界でロボットが親しまれるようになると、SF作家のひとりがロボットと仲良くするためのルールを考えました。
それが、「ロボット工学三原則」です。
ロボット工学三原則は当初小説の中だけの話でしたが、現在では実際のロボットの研究や開発に大きな影響を与えているといわれています。

【ロボット三原則】
第1条 安全 ロボットは人間に危害を及ぼしてはならない
第2条 確実 第1条に反しない限り、人間の命令に服従しなければならない
第3条 壊れない 第1条、第2条に反しない限り、自己を守らなければならない
引用-『I, ROBOT』1950

日本のロボット技術の進化

日本で初めてのロボット學天則

日本の歴史上初めてのロボットは「學天則」といわれています。

学天則
引用-大阪市立科学館

これは東洋でも初めてのからくりロボットで1928年昭和天皇の即位を記念して開催された大礼記念京都博覧会で公開されました。
名前は「天(自然)の法則に学ぶ」という意味があり、その顔はあらゆる人種に見えるといわれ、製作者の平和への思いが込められています。
この學天則というロボットは、表情を変えたり腕を動かしたりとより人間らしい滑らかな動きと表情をしたといいます。
その原動力には、空気の膨圧力(圧縮空気の膨らむ力)が利用されています。
この學天則は各地の展覧会に出展された後、ドイツに売却され廃棄されたといわれています。
東洋初のロボットの最後は悲しいものになりましたが、現在は大阪市が復元を行い、學天則のレプリカが大阪市立科学館に展示されています。
参考-大阪市立科学館

世界で初めての2足歩行ロボットWABOT-1

その後も歴史を追うと、日本はロボット技術を急速に進化させていったことがわかります。

早稲田大学ヒューマノイド研究室では、1966年ごろから2足歩行ロボットの研究が進められ、下肢モデルとして生体下肢部の歩行機能を解析し設計したWL-1が登場しました。その後、複動型シリンダを電気油圧サーボ方式で制御するWL-3を開発し、2足で直立および、座位状態保持を確立しました。
時を同じくして腕や指を動かすロボットWAM-1、2、3が開発されコンピューターを用いて人工の手を制御する試みがなされました。このWAMは1980年代~90年代になると、電子オルガン中級程度の演奏を実現するまでに至りました。
これらの技術を駆使して1970年日本で初めての2足歩行ロボットWABOT-1が開発されました。WABOT-1は、東洋だけでなく、世界初の2足歩行ロボットとなりました。

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引用-早稲田大学ヒューマノイド研究

この人間型知能ロボット「WABOT-1」は、完全2足歩行によって移動することができ、手足システム、聴覚システム、音声システムから構成されています。
QABOT-1には口と耳がついており、人間とのコミュニケーションとして日本語での会話ができ、対象物を認識し、距離や方向を測定して2足歩行によって移動し、触覚を有する両手で物体の把握・移動も行えたそうです。
人間に例えると1歳半程度の幼児の能力に匹敵するとのことなので驚きです。

その後登場したWOBOT-2では、WOBOT-1のように汎用型ロボットではなく、芸術活動に特化したスペシャリストロボットとして、進化開発した結果、人間と日本語で自然な会話を行い、楽譜を目で認識、両手両足で電子オルガンを演奏することができ、さらに、人間の歌声を認識し、人間の歌声に合わせて伴奏することができるまでになりました。

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引用-早稲田大学ヒューマノイド研究

こうして今日のロボットの登場まで、日本のロボット技術の進化は日々躍進していきます。
参考-早稲田大学ヒューマノイド研究

産業としてのロボットの歴史と進化

産業ロボットの登場

現在、産業としてのロボットはなくてはならないものになっています。

産業ロボットの発展と進化が、戦後の日本の発展に大きな力となりました。
戦後10年以上が経ち、高度経済成長期と評される時代、アメリカではIBMが商業コンピューター「IBM360」を開発し、ロボットの頭脳ともいえるコンピューターの開発が盛んに行われました。
同時期に、後にロボットの父とも呼ばれるJ.Eエンゲルバーガーは単純で繰り返し作業に従事する作業者の自動化に着目し、産業用ロボットを開発するベンチャー企業「ユニメーション社」を創業しました。
ユニメーション社では世界初の本格的な産業用ロボット「ユニメート」が試作され、主に自動車工場向けに実用化していったそうです。
日本ではバイクでおなじみの川崎重工業が、このユニメート社のロボットの可能性に着目し、1968にユニメーション社と技術的計契約を締結し、日本初の産業用ロボットの誕生に乗り出しました

そして1969年日本初の産業ロボット「川崎ユニメート2000型」の1号機を発表しました。

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引用-川崎重工

当初はユニメーション社の設計をそのまま踏襲していましたが、厳しい使用条件を要求する日本の自動車工場では問題がありました。
特に、平均故障間隔時間は1000時間であり、しばしば故障することがあったといいます。
現在の平均故障間隔時間が8万時間となっていますので、その後の技術者たちの開発の努力が手に取るようにわかると思います。
こうして、日本に産業ロボットが導入され、その後は産業もロボットも目覚ましい発展を遂げることになります。
参考-川崎重工業㈱国産最初の産業用ロボット

産業ロボットの進化

産業ロボットの起源は、単純作業を人間の代わりに行うことです。
産業ロボットの多くはアーム型ロボットで、溶接や塗料等、人体に影響がある作業を熟練工並みの精度で安定して長時間行うことができます。
近年では作業目的に応じてロボットの経常は変化し、より動作自由度を高くするために多関節型のロボットの開発が行われました。

例えば、自動車工場の製造ラインでは1つのラインに様々な用途に応じたロボットを見ることができます。(以下動画参照)

そして、センサーが発達することによってロボットの技術は飛躍的に向上し、現在では凄腕ロボットの開発により、人ができない精度とスピードで作業をこなすことに加え、より複雑な作業も可能になっています。

例えば、安川電機では、創立100周年という節目に実施した『YASKAWA BUSHIDO PROJECT』では、「MOTOMAN-MH24」という産業用ロボットで「6mmBB弾居合斬り」を始め数多くの世界記録を保持する町井氏の神業とも言える剣技を、”俊敏性”・”正確性”・”しなやかさ”を高次元に融合させるという産業用ロボットの性能限界に挑戦して、忠実に再現しました。(以下動画参照)

また、自動車等の生産業への導入から始まった産業ロボットは、その技術を医療や介護など様々なジャンルへ応用されるようになりました。
最先端の技術、医療や介護への応用を記載した記事もありますので、興味のある方はあわせてご覧ください。

ロボット技術の進化と未来 ~最先端技術を活用したロボット社会~
ロボット技術の進化と未来 ~人工知能の進化、人間とロボットが共に切り開く未来の形~

ロボットの現在

現在のロボットといえば、ソフトバンクのPepperを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。

softbank ペッパー君
引用-ソフトバンク

ロボットは様々な場所で活躍し、生活になくてはならないものとなりました。

そんな中、働くロボットたちとして注目されているのがハウステンボスです。
ハウステンボスでは、たくさんのロボットがパークやホテルで働いています
ハウステンボス直営の変なホテルでは、フロントの対応を始め、ロボットが活躍する未来の姿を描いたホテルになっています。

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また、未来のレストランをテーマにした変なレストランロボットの今を未来を体験できるロボットの館等、最先端のロボットが集合したロボットの王国が登場しました。

ロボットは現在、私たちの生活になくてはならないものになっています。

そして、「ロボット大国」と呼ばれるまでになった日本の技術は、研究者たちの絶え間ない挑戦から築かれ、今なお進化しつづけています。

ロボット技術の進化と未来 ~最先端技術を活用したロボット社会~

プロフィール(当メディアの運営者 兼 筆者)

保育園協会の園長から「ITで保育業界を変えたい」と相談を受け、保育士と協力し合い、保育以外の業務を自動化し、保育士が保育に専念できる環境を創り上げる。

そして、保育の現場で子ども達の個性=無限の可能性を育む環境に関る中で、大人社会でも同様のことはできないかと考え始めたところ、「こどもも大人も凸凹(違い)を認め合える社会」の実現を目指すNPO法人オトナノセナカに出会い参画する。

現在はNPO活動と並行して、フリーランスエンジニアとして自分が得意とする「IT」x「教育」x「子育て」の分野を中心に活動を開始する。様々な人がお互いを認めて高め合い、創造性が渦巻く楽しい世界を目指して。

プログラミングレッスン・教室、IT研修・教育、ITコンサル・マーケティング、IT(技術)相談・支援、システム開発(WEB・スマホ)、保育園IT化、子ども・子育て関連事業など